正解のない世界への準備

摘要

近年、機械学習による人工知能の高度化によって、多くの仕事が機械に置き換えられるのではないかと言われている。膨大な事例を収集し、個人が一生のうちに直面するよりもはるかに多くの教師事例をもとに（現象そのものの理解なしで）判断をこなすアプローチは、従来、人が長年の経験で暗黙的に解決してきたさまざまな判断にとって替わるだけのポテンシャルがあるのではないかと考えられる。つい先日、われわれ大学教員はセンター試験の入試監督業務に動員された。膨大な想定問答集を前にすべての受け答えをミスなくこなす必要があり、いっさいの間違いもなく業務を行うことが求められる2日間を過ごした。実は、これら入試に代表される高等教育、具体的には学部3年生までの講義主体の教育や、試験監督業務のような定型化された作業には、同じ特徴がある。それは、絶対的な「正解」が存在し、正解にどれだけ近いかによって評価が行われることである。