糖質関連酵素の機能を活用した特殊オリゴ糖の作出とその利用

摘要

糖質関連酵素の機能を活用して特殊オリゴ糖を作出し，その用途を調べる3つの研究を行った.グリコシダーゼの潜在的機能を活用したデオキシオリゴ糖の合成研究では，各種グリコシダーゼが特定の部分デオキシ糖を認識することを見出し，この特異性と糖転移作用を利用して配糖体を構成する種々の部分デオキシオリゴ糖ユニットを合成した.アセチルアミノ糖含有オリゴ糖の酵素合成と開発研究では，糖転移型β-フルクトフラノシダーゼを含む黄麹菌の菌糸を全細胞触媒として使い，スクロースとN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)からN-アセチルスクロサミンを合成し，本2糖がプレバイオティクスとして有効であることを見出した.さらに，本2糖を原料として用いて新規なGlcNAc含有オリゴ糖の酵素合成も行った.キチン由来へテロ2糖の酵素生産と生物機能調査に関する研究では，キチナーゼとキチンオリゴ糖脱アセチル化酵素の作用でキチンから生成するへテロ2糖が，特定のVibrio属細菌のキチナーゼ生産を強力に促進するシグナル分子として機能することを見出した.上記の研究を通じ，特殊オリゴ糖の有用性とその作出における酵素利用の有効性が示された.