電子ポートフォリオを活用した卒業研究記録と 達成度評価の試み

摘要

卒業研究は学部教育の集大成として，指導教員の指導の下，1年間にわたる研究活動を通して評価される．そこでは，得られた研究成果のみならず，基礎的な知識力，論理的思考力，問題解決力，自己管理力，コミュニケーション力，総合的な表現力など複数の評価軸を用いて，プロセスの達成度を評価する．一方で，学生自身が日々の活動を通じて，どのような能力を得たのか自己認識すると同時に，教員がその状況を頻繁に把握しながら指導を行う PDCA サイクルを構築させることができれば，より一層高い教育効果が得られるはずである．名古屋工業大学工学部電気電子工学科では， 4 年生の卒業研究を対象とした卒業研究記録ノートを導入し，日々の研究活動の記録を通して，学生自らが達成度を随時確認する手続きを取ってきた．一方で，紙媒体では，日々冊子を携帯しながら記入を促すことの困難さや，教員による状況把握とフィードバック機会が限定的であることに加え，学習時間の集計やデータの分析によるPDCAサイクルの構築，保存方法，印刷費用などが課題であった．そこで，これまでの卒業研究記録ノートのコンテンツを基にして，卒業研究の記録と達成度評価を実施できる電子ポートフォリオシステムを新たに構築し，平成29年度から試行を開始した．本稿では，構築した電子ポートフォリオの概要と利用状況について報告する．