食品危害カビにおける分類,同定と迅速検出法

摘要

私たち日本人は古来より，コウジカビを味噌，醤油，日本酒，焼酎などの発酵食品の製造に利用してきた。東南アジアでは，クモノスカビをテンペ（大豆の発酵食品）や紹興酒の製造に，西洋では，アオカビをチーズの熟成に使用している。さらに，ペニシリンなどの抗生物質をはじめとする医薬品，クエン酸などの有機酸，セルラーゼなどの酵素生産に応用している。自然界では，他の微生物と共に物質を分解·還元する役割を担い，地球の生態系を維持する上で大きな役割を果たしている。本稿では，まず，カビによる健康被害，カどの分類，同定について述べた後，食品危害カどの迅速同定法について概説する。糸状菌（狭義な意味でのカビ），酵母，きのこを総称して真菌あるいは菌類と言うが，ここでは，酵母，きのこを含めて広義な意味でのカビと言う用語を使用する。