ANCA関連血管炎；専門領域の視点から:診療科によるANCA関連血管炎治療に対する考え方の相違について

摘要

顕微鏡的多発血管炎(microscopic poly angiitis: MPA)と多発血管炎性肉芽腫症(granuloma-tosis with polyangiitis: GPA)は多臓器障害を起こす難病であるため，その診療には膠原病内科，腎臓内科，呼吸器内科，循環器内科，神経内科，耳鼻咽喉科，眼科など多科が関わるケースが多い.そして，その関係科間の連携が重要である.現在まで，複数の研究班で抗好中球細胞質抗体（ANCA)関連血管炎（ANCA-associated vasculitides: AAV)に関する診療ガイドラインが作成され，日常診療に利用されてきた.すなわち，血管炎症候群の診療ガイドライン（循環器病の診断と治療に関するガイドライン，Japanese Circulation Society, 2008)AAVの診療ガイドライン（2014改訂版，厚労省研究班),ェビデンスに基づく進行性腎障害診療ガイドライン（2014,厚労省研究班)などが策定されている.しかし，それぞれ異なる診療科の医師を中心として作成されたものであるため，同じAAVに対する治療推奨が異なっているケースも見受けられた.その結果，日常臨床においても治療方針を他科とデイスカッシヨンする際に意見が食い違うことが経験される.筆者らは，厚生労働省難治性血管炎に対する調査研究班(横断協力分科会）に属し，AAVの診療ガイドラインを広めるとともに，標準化するための努力を行ってきた.その一環として，膠原病内科，腎臓内科，呼吸器内科の医師を対象として，これら過去のガイドラインに対する医師へのアンケート調査を2015年に行った.この結果は，昨年出版されたAAVの診療ガイドライン2017こも一部掲載されているが，本稿ではそのアンケート調査の結果を中心に紹介したい.