山東地域における中国南方産陶瓷器の流通に関する研究（その１） : 宋墓に副葬された事例を中心に

摘要

山東地域において北宋墓葬出土の南方産瓷器は主に北宋（前・）中期、後期の二段階に分けられる。南方産瓷器は北宋中期の墓葬内での発見事例は極めて少なく、後期墓葬からは比較的多く見られる。北宋中期の南方産瓷器は主に沿岸地帯で発見されており、海上交易ルートと関連していると考えられる。北宋後期になると、南方産瓷器は山東の内陸地区からも発見されており、商品として山東地域に流通し始め、北宋後期末頃の11世紀後半から12世紀初頭にはさらに広く流通している。但し、流通する範囲は一定の経済力をもつ社会の中層以上の人々、つまり士大夫以上の人々の間での流通と使用に限られ、それ以外では在地の白釉瓷を使用していた。南方産瓷器は山東での流通は主に海路を介しており、北宋後期になると海運以外にも、内陸の運河を利用した輸送も加わり、このことが南方産瓷器の山東地域内での流通域を広げたのである。