聴覚障害者を対象とした3パート曲のリズム認知に関する研究

摘要

聴覚障害があっても音楽を楽しむ人は数多くいる．彼らが音楽を認知するにあたってリズムは重要であり，それに着目した研究が多くなされてきた．本研究では，リズムを認知するには「拍」が重要であるとし，14名の聴覚障害者に対して，オリジナルに制作した3パート曲を用いたビートタッビング実験を実施した．「曲の難易度」，「曲の種類」，「曲のパート条件」の3つの要因がリズム認知にどのような効果があるかを検討した．また，11名の健聴者にも同様の実験を行った．結果として，聴覚障害者に関しては，リズム難易度がタッピング精度に影響を及ぼすことがわかった．半数以上の聴覚障害者は，メロディーパートを頼りにリズム認知していることが示唆された．主観難易度と合わせて検討したところ，タッピングの難しさの感覚と，タッピング精度は必ずしも合致しないことが示された．また，健聴者のほとhどが同じタッピングタスクで問題なく課題を実行した．健聴者群においては，音楽経験の有無がタッピング精度に影響をあたえることがわかった．