静注用免疫グロブリン製剤のPanton-Valentine leukocidin中和抗体価に関する検討

摘要

Panton-Valentine leukocidin (PVL)は，Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)を含 む黄色ブドウ球菌が産生する生理活性の強い毒素である。一方，静注用免疫グロブリン製剤（Mg)は, 毒素中和作用が認められている数少ない薬剤の一つであり，われわれはこれまでの研究において本邦で 製造されたMgがヒ卜血液中においてもPVLの細胞傷害活性を中和することを示している。しかしな がら，世界各地で製造販売されているMgは，原料血漿はもちろh製造方法も異なることから，完全 に同一の製剤とはいえない。そこで今回われわれは，製造年代または製剤の違いにおけるMgのPVL 中和抗体価の比較を行った。Mgは，国内外で販売されているインタク卜型液状製剤を使用した。加え て，年次推移の検討においては，1990年から2015年までに本邦で製造された製剤（18 lots)を使用 した。PVL中和抗体価は，二倍階段希釈法により算出した。その結果，測定したすべてのMgが高値 のPVL中和抗体価を示した。また，製造年代および製剤によって，その抗体価に顕著な違いは認めら れなかった。これらのことから，PVLに起因する重症感染症に対して，Mgは製剤間の差異なく抗菌薬 療法の補助的作用が期待できる。