理科教育の現状と課題－小学校の事例

摘要

最初に、理科教育を日本の歴史から振り返る。江戸時代、学者や武士だけでなく、庶民にも、読み、書き、そろばhを学ぶことのできる社会が浸透し、書物を介して文化や科学技術が全国に広がっていった。江戸時代中期になると蘭学が興隆し、杉田玄白のような漢方医の中には蘭学者の協力のもと、人体解剖を行うなどして西洋医学を取り入れ、伝統医学と融合した日本独自の医学が生まれた。また、有用な鉱物や動植物を研究する本草学が江戸時代末期に極められ、その後、西洋の知識が取り入れられることで、明治期になると近代的な博物学へと発展していった。明治政府は明治五年に学制を発布し教育制度を整えて理科の前身に当たる科目を設け、一四年後の学校令によって「理科」を定めるに至った。さらに二四年後に理科の国定教科書を制定する際、要点を記述するに留め、観察·実験を重視した教科として理科を確立してきた。それに伴い、様々な教材や教具の整備を進め、観察·実験を大切にした理科教育を推進し、科学立国日本の礎を築いていったのである。