B型ウイルス肝炎の分子免疫学HBV感染と免疫機序HBVのヒト肝細胞への感染機序

摘要

ウイルスの感染が成立するには, ①標的細胞(膜表面)への付着(接着)·侵入→②細胞内での複製·増殖→③成熟ウイルス粒子の形成(級み立て) ·細胞外への放出,といった一連の過程が確立されなければならない.多くのウイルスは種特異的に感染し,ある一定の臓器(器官)·部位へ高い親和性をもって感染する. B型肝炎ウイルス(human hepatitis B virus: HBV)もヒト肝細胞へ特異的に感染する.これらの事実は,ウイルス表面に突起のような最初に接着する外被膜蛋白と標的細胞表面で特異的に発現している受容体の存在を示唆する.実際,多くのウイルスで感染に必須なウイルス蛋白と標的細胞膜受容体が同定されている. HBVに関しては,過去に多くの文献で感染(付着·接着)に必要なウイルス側部位(蛋白)とそれと特異的に結合する蛋白や受容体と思われる肝細胞膜蛋白候補が報告されてきた.しかし,感染に必須な分子が決定的に同定されていないのが現状である.本稿では,特に感染の最初の段階であるHBVのヒト肝細胞への付着(接着)に焦点をあて,現在に至るまでの研究報告を要約した.