魚の安全性をセンシングできるバイオセンサーの開発～魚肉の鮮度測定、微生物検出から魚の健康診断まで～

摘要

近年、食の安全に対する関心が消費者の間で急速に高まっている。 既にわが国の食品産業界では、加工過程においてHazard Analysis Critical ControlPoint（HACCP）が用いられ、流通過程においては、トレーサビリティシステムの適用が試みられている。 こうした中、食の安全のための評価項目を迅速、間優にセンシングできるシステムの開発が望まれており、魚介類をはじめとする水産物においても例外ではない。 では、「食としての魚の安全性」を評価するには何をセンシングすればよいのだろうか。一つ目は、原料の鮮度が挙げられる。特に日本では魚介類を生で食すことが多いため、魚肉の鮮度は安全性からの観点ばかりでなく嗜好的な要素も多く含んでいる。 魚介類は畜肉類に比べて傷みやすく、生食が可能かどうかの見極めが難しい。 食べる前に鮮度の確認ができれば、安心して食すことができる。 二つ目は、有害細菌の検出が挙げられる。近年では、病原性大腸菌O－157による集団食中毒の全国的な発生が、われわれの生活を脅かしたこともあった。 食中毒については、流通や調理の過程において厳しい管理体制を引いているにもかかわらず、毎年1，000件以上の事件が発生している。 その内訳は、魚介類の食中毒事件が大半を占めている。 魚介類は生で食すことが多いということが、このような結果につながった原因と考えられる。 従って、新しいセンシング技術が開発され、食品中の有害細菌の有無が誰にでも簡単に確認することができれば、食中毒の件数も激減するに違いない。 三つ目は養殖魚を食材としたときの安全性、すなわち養殖魚の健全性が挙げられる。水産養殖業界では、これまで魚病対策として抗生物質による投薬を行ってきたが、近年の薬事法の改正により抗生物質の魚への残留などを懸念して、治療薬を強く制限するようになった。 その後、活魚の食としての安全性という観点から、魚の健康度を定期的に評価し、早期に異常を察知することによって、薬剤に頼らない養殖生産が精力的に試みられている。 このような背景から養殖魚の健康診断が可能なセンシングシステムの開発が望まれている。 以上のような項目を迅速にセンシングし、その情報を食のネットワークシステムの乗せることにより、いつでもどこでも安全と安心につながる食生活が実現できると考えられる。