近赤外およびフ一リェ変換赤外分光分析法による泡盛の酒質判定

摘要

近赤外分光分析は穀類とりわけ小麦の非破壊分析法と して発達してきたが，測定装置の改良やデータ解析を含 む技術的進歩により，現在では各種の食品の迅速分析法 として採用されている。アルコール飲料の分野でもワイ ンの熟成度合い"'2',ワインの産地の判別3''41や，老酒の 熟成期間の判別5'やブランデ一等の蒸留酒の産地の判別6> など多くの研究がされている力5'，公定法になった測定法 はない。泡盛は沖禅県特産の本格焼酎である。消費者の信頼に 応え，商品選択に必要な情報を正しく提供する目的で2004年6月には「泡盛の品質に関する自主基準」を設け，古酒や混和酒の基準を厳密化した"。また，泡盛の品質 はもっぱら利き酒で感覚的に求められている力s，品質を 評価するための最も客観的な指標は，含まれている成分 の種類と含有率を正確に把握することであり，泡盛銘柄 の酒質はこれらの情報に基づいて客観的に表現されることが望まれる。これまでにも泡盛の成分特性と熟成度合 いの関係s'や，新酒と古酒の成分の主成分解析による類 別9'など，化学的な分析で泡盛の特徴を明らかにする試 みがなされてきた。しかし，泡盛は出荷されている銘柄 数が多く，これらに含まれている成分値を分析によって 把握するためには，一定期間内に迅速かつ正確に多数のサンプルの成分分析を行うことが求められる力；'，従来か ら用いられている化学分析方法では対応が困難であると 考えられる。また，泡盛の一般的な特徴はよく知られる ようになってきたが，沖禅県内にあるすベての製造所(48か所）の銘柄の品質を一度に分析した例はきわめて 少なく，個々の泡盛の個性や，生産地域と品質の関係を 確認するための客観的な資料として，販売されている泡 盛の銘柄を網羅的に分析したデータが明らかになれば資 料的価値も高いといえる。そこで，本研究では，沖禅県内の48酒造所で製造している泡盛の.般酒51銘柄を用い て，国税庁所定分析法'°'に準拠して，密度，アルコール 分，メチルアルコール，総酸，アルデヒド，フーゼル油 を測定し，さらにこれらに粘度およびpHを加えて，銘 柄に基づいた泡盛の品質特性を明らかにした。さらに，透過反射型の近赤外分光分析装置およびフ一リェ変換赤 外分光分析装置を用いて計測したスぺクトルと，化学分 折によって測定した成分値を用いて，泡盛に含まれる各 種成分の定量分析を目的とした非破壊品質評価モデルの 開発を行い，地域特性による分類の検討を試みた。