メタノール資化性酵母における細胞機能制御の分子機構と応用開発に関する研究’

摘要

メタノール資化性酵母（以下，メタノール酵母と略す）はメタノールを単一の炭素源として生育できる酵母で，1969年，京大，緒方らによりCandida boidinii（Kloeckera sp．）No．2201株が世界で最初に報告された．以降，メタノールが安価な炭素源であることからSCP，代謝産物生産への期待が高まり，C_1代謝経路の解明やその応用利用に関する研究が行われた．しかし，メタノール酵母がバイオテクノロジーの中で広く注目を集めたのは，Pichia pastorisによる異種遺伝子発現系が開発され，肝炎ワクチンの生産やインベルターゼの高分泌発現が示されたのが契機であろう．一方，細胞生物学の分野において，単膜系オルガネラであるベルオキシソームの形成機構を解明するモデル生物としても，メタノール酵母は，重要な役割を果たしている．本研究は，メタノール酵母のもつユニークな細胞機能を遺伝子工学，分子育種系から明らかにして，そのさらなる応用開発を目的として行った．