価値共創型教育サービスにおける顧客期待の分析手法

摘要

サービスの付加価値を高め，生産性の向上を実現するためには，受給者がサービスを利用することによって生まれる使用価値を高めることが重要である．使用価値は，提供者と受給者が双方的かつ同時に価値を創造する価値共創によって実現される．本研究では，効果的な価値共創を実現するサービス設計方法論を整備することを最終目的とし，その対象事例として高等教育を取り上げる．高等教育は，価値共創という観点において，多くの課題を有しているサービス分野の一つである．高等教育における使用価値は，学習者が学習を通じて得られた知識や技能などを，ある目的に即して活用，実践した結果として実現される．そのため教師は，学習者が望む使用価値を踏まえ，授業内で実現する学習成果について学習者との合意を形成する必要がある．しかしながら現状，この学習成果は教師側から一方向的に定義され，学習者が望む学習成果と教師が求める成果に不一致が生じることが多く見受けられる．これは学習者が適切な価値を獲得する上での大きな阻害要因となっている．そこで本研究では，教師が学習者の望む使用価値を踏まえ，授業内で実現する学習成果について学習者との合意を形成するための支援手法を提案する．