触察時に指と素材間に作用する法線力と接線力の統計的関係

摘要

触知覚は物表面と人の指の間に生じる相互作用力もしくはその結果生じる指の変形に依る．触知覚を決定する物理的要素は，広く研究されているものの未だ明らかでない．触察時に物表面と指の間に作用する力と触知覚との関係を調査する試みが行われており，力の振動成分もしくは皮膚の変形が触知覚に影響することが，多くの研究で報告されている．これらの研究は，機械受容器の周波数特性と関連付けて，振動の周波数と触知覚の関係性を議論してきた．例えば，指の皮膚変形の振動周波数は物の表面形状の空間周波数に対応し，粗さ知覚に影響する．一方で，粗さ知覚は，接線力や摩擦の影響も受ける．すなわち，触知覚は皮膚と素材の間に作用する法線力と接線力の2 分力両方の影響を受ける．しかし，2 分力の関係と触知覚の関連はこれまでに集中的に調査されていない．