形態を基盤とした微小環境の研究で移植臓器の拒絶を防ぐ

摘要

我々は,形態に基づいた独自の視点から免疫応答をとらえ,臨床応用を目指している.臓器移植は標 準医療になりつつあるが解決すべき問題も多い.我々はまず,移植臓器に内在する白血球が移植後にホストリン パ器官へ遊走し,直接感作を介して急性拒絶反応を促進することを明らかにした.次にドナー特異的輸血(DST) が免疫寛容を誘導する機序に注目した.移植モデルで微小環境の形態学的な解析を行い,DSTによる移植片特 異的免疫抑制効果は,DST抗体が移植臓器由来白血球を除去して拒絶反応の起点を作らせないことであると明 らかにした.この知見をもとに，摘出した臓器に内在する白血球を臓器保存液中で抗体と反応させることで,拒 絶やGvHDを特異的に制御する応用法を考案した.また,DST抗体産生機構の解析で得たT細胞の優位性に着 目し,異系T細胞を抗原伝達体とした新しい抗体産生誘導法を確立した.現在,感染症予防への応用を試みて いる.