地図情報と混雑情報を併用したコンパスルーティングとデジタルサイネージに基づく避難誘導方式

摘要

災害による犠牲者を減らす上で，災害発生時の迅速かつ適切な避難が重要である．これまでの避難誘導は，一般的に，あらかじめ避難経路を決定して提示しておき，災害発生時にはその経路にしたがって避難するというものである．しかし，特に大規模災害時には建物や道路の損壊や火災，そして津波などによって予期せぬ箇所が通行不能となったり，障害物によって予期せぬ箇所で滞留が発生するという問題がある．その上，特に都市部においては，群衆は周辺地域の地図を把握しているとは限らない．さらに，特に大規模災害時には通信インフラが損傷を受け，被災者は孤立した状態に置かれる，このような事前の想定や準備が困難な状況に対しては固定的な避難誘導は必ずしも効果を発揮するとは言えない．一方，様々なIoT機器からのセンシング情報なども利用し，道路状況と避難所の位置，被災者数に応じて迅速に避難経路を決定し，スマートフォンやデジタルサイネージなどを活用して個々避難者にリアルタイムに適切な移動方向をナビゲーションするシステムの実現が可能となりつつある．そこで本稿では，避難者が持つスマートフォンなどの携帯端末やデジタルサイネージを組み合わせることによつて避難誘導を図る方式を検討し，シミュレーションによって評価する．