第一回はじめに～生命にとっての放射線、イオンビーム～

摘要

最近、専門外の方からも「イオンビーム」という言葉を聞くようになってきた。放射線という一元的な捉え方がある一方で、量子ビームや重粒子線、中性子など、キーワードが豊富になってきたのも事実である。さて、今回から本誌において「イオンビームを用いたバイオ?医療への応用研究の現状と将来展望」と題した連載が始まる。イオンビームを用いた生物研究の歴史は思いのほか古く、1950年代から放射線治療への利用や宇宙放射線の影響を調べる一環として、ヒトだけではなく、動物や植物へのイオンビーム照射効果の研究がドイツや米国を中心に行われてきた。わが国では、1970年代以降、理化学研究所や放射線医学総合研究所を中心に、放射線生物学や放射線治療を目的に研究が進められた。