果樹の育種指定試験地における研究の現状:酸造用ブドウ

摘要

わが国のワイン消費量は食の多様化、ワインの低価格化、赤ワインを中心とする健康ブームなどに伴い、近年急激に増加している。 安価な輸入ワインの増加に伴い、ワイン消費の底辺が広がり、一方ではより高品質の国産ワインに対する期待も大きい。 わが国では「甲州」、「デラウエア」などの生食醸造兼用種が白ワイン原料として、また「マスカット，ベーリーA」は赤ワイン原料として利用されてきた。 これらの生食醸造兼用品種は量産性で耐病性や耐裂果性の点では優れており、農家経営にとっては危険分散的な意味合いからも重要である。 しかし、ワイン品質では米国種（Vitis labrusca L.）に由来する香りなどにより、欧州種と比べてワイン品質がやや劣ったり、ワインとしての特徴に乏しい点が問題とされてきた。 一方、世界的に評価の高い欧州系の醸造用ブドウ（Vitis vinifera L.）は、わが国の気象条件下では降雨にょる裂果や病虫害、凍寒書などが発生し、優良なワイン原料の生産が困難なものが多く、安定した栽培が行われていない。