肺腺癌における小胞体ストレスセンサーBiP/GRP78発現の予後因子としての意義

摘要

背景 小胞体ストレスセンサーBiP/GRP78は腫瘍進展に重要な役割を果たしているHeat shock protein 70の一種であり，小胞体に局在している．BiP/GRP78は様々な癌腫に高発現しているが，非小細胞肺癌における発現の臨床病理学的な意義は不明である．今回，肺腺癌におけるBiP/GRP78発現についての臨床的意義を検討した． 対象と方法 群馬大学医学部附属病院にて外科的切除された肺腺癌220例を対象とした．切除標本をBiP/GRP78，PERK，Ki-67，p-mTOR，CD34を免疫組織学的染色にて評価した．結果 患者背景は男/女=103/117，年齢：≤65/＞65=76/144，喫煙歴：あり/なし=107/113，病期：I/II+III=162/58であった．BiP/GRP78は症例の41%で高発現を認め，胸膜浸潤，リンパ管侵襲，脈管侵襲，細胞増殖（Ki-67），mTORリン酸化と有意に相関した．多変量解析にて，BiP/GRP78発現は病理病期I期の症例で無増悪生存期間（p=0.029）および全生存期間（p=0.009）の不良を予測する独立した因子であった．結論 BiP/GRP78発現はI期肺腺癌における独立した予後因子であった．小胞体ストレスセンサーBiP/GRP78の発現は肺腺癌の進展に重要な役割を果たしていることが示唆される．