WTOと予防原則一貿易と環境に関する議論から

摘要

予防原則とは、食品や化学品などが人体や自然環境に害を及ぼし得ると判断できる要素があり、その危険性が科学的に証明されているとは必ずしもいえないときでも予防的に規制措置をとることができるという原則である。 その意味が確立しているわけではないが、例えば遺伝子を組み換えた生物や食品の輸入が人体や環境に危険を及ぼす可能性がないとはいえない場合に、その危険性を裏付ける科学的証拠が十分に得られていないときでも危険を回避するため予防的に輸入規制を行う場合には、予防原則を採用したことになる。一九九二年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議においてリオ宣言が採択され、その第一五原則として予防的アプローチが盛り込まれており、いくつかの環境協定において予防原則が取り入れられている例がある。