WTOと予防原則貿易と環境に関する議論から－

摘要

予防原則を採用することや、環境協定に基づく貿易規制を一般的に認めることについてWTOには慎重論があり、前回（五月号）で触れたようにさまざまな見解が述べられている。 一方で、関連するいくつかの判例も生まれているが、見解が分かれているからといって判例に委ねるのは、健全なあり方ではない。 これまでの判例では環境や健康保護のための貿易制限措置をガットやWTO協定に違反すると結論付けた例があったため、WTOに対する市民団体の批判が少なくない。例えばシアトルで行われたWTO閣僚会議の際には、環境保護など市民の関心事項がWTOでは十分考慮されていないと思う人々が大規模な反対運動を展開し、鮮明な印象を残した。 WTOの信頼性を高めるためにも、予防原則の扱いや環境法とWTO協定の関係を明確化しておく必要があろう。