都市農業の現在—回顧と展望

摘要

都市計画上、市街化区域は原則として 一o年以内に市街化されるべき地域であり、「農地はあってはならないもの」として扱われてきた。特に地価高騰が問題となったバブル経済期の生産緑地法改正(一九九一年)により、三大都市圏特定市では生産緑地の指定を受けないと相続税納税猶予制度が適用されなくなり、同制度の要件も一一〇年間の自作義務から終生営農義務と極めて厳しいものとなった。生産緑地制度の指定も三〇年間と長期間であった。そのため市街化区域内農地のうち多くは生産緑地の指定を受けずに宅地並みの固定資産税を支払い続けてきたが、一九九三年には一二万八千.sあつたものがー一〇一六年には六万一千.sと半分以下にまで減少してしまう。だが、人口減少社会に転換した現在、都市の縮退に伴うコンパクトシティ化を如何に進めるかが課題となり、空き家も急増するなど状況は一変した。これ以上の農地転用は不要どころか使いようのない宅地の農地への転換も考えるべき時代となった。そこで二〇一五年に都巿農業振興基本法が制定されて「農地は都市にあるべきもの」となり、翌二O一 六年には都市農業振興に関する計画策定の努力義務が自治体に課せられることになつた。