中学校段階におけるロボット学習の展望

摘要

ロボット学習の具体的な検討の前に，ロボット学習普及の動機について考えてみたい．ロボット関係の技術者や研究者の方々が中学生のロボット学習に取り組む動機は，一般的な教育への情熱とともにもう二つあると想定される．一つは，鉄腕アトム等に憧れてロボット研究の道に進む例に見られるように，次世代の子ども達の中から，この分野に興味を持ち，ロボットの技術者や研究者を目指して欲しいという，後進育成の願い．もう一つは，ロボットの技術者や研究者を目指すところまではいかなくても，ロボット関連の仕事や技術そのものに興味·関心を持ってもらい，この分野の社会的理解や支持を高めたいという裾野拡大の願いではないだろうか．この二つの願いはもちろん両立するが，それぞれに別な教育手法を用いることが効果的であろう．例えば，後進育成は，専門教育の萌芽として位置付く．中学校では選択教科や部活動など，ロボットに興味·関心の高い生徒達に対する選択的学習が対象となる．社会教育で行われるロボット学習も，その自主性から大半は選択的学習に分類されると考える．一方，裾野拡大は後述する技術科での必修授業のように，すべての中学生を対象にした教養としてのロボット学習が対象であると考える．マスコミ含め，ロボット学習というと，一般に必修授業よりも選択的学習のほうがレベルも高く，注目されやすい．しかし，両者は車の両輪のようなものであり，ロボット学習の教育効果を高めるためにも，両者の連携が不可欠であると考える．以上のような課題意識に基づき，本稿では，中学校におけるロボコンのベースとなるロボット学習を展望する．