携帯電話における製品進化の可視化－日本企業の国際競争力低下の分析

摘要

情報通信産業における日本の製造業は、1990年代以降、高い技術力を生かし、新製品を次々に開発してきた。特に薄型テレビ、DVDプレイヤー、デジタルカメラ、携帯電話などは、日本が世界に先駆けて新製品の開発を進めて、世界のイノベーションをリードしてきたといえる。しかし、2000年代に入ると日本製品の国際シェアは、減少傾向を示す。通信白書によると、情報通信機器について、1997年と2005年の日本の情報通信産業の国際競争力を比較して、「1997年は、競争力が高く、かつ生産の立地としても優位性が高いと考えられてきたが、2005年には、日本の情報通信産業の競争力は、低下傾向にあると読み取れる」と、日本の国際競争力の低下傾向を指摘している。特に、携帯電話は、日本の製品の世界シェアが低い。携帯電話は、20世紀後半から21世紀前半において、インターネットと並ぶ、世界中で広く普及した通信システムである。携帯電話端末は、世界において1994年で約2千万台が販売され、その後の急速な普及により2008年度で約12億台が販売された（図1）。2000年までは、日本、欧州、米国中心に販売台数が増えたが、2003年以降、アジア、南米、アフリカでの販売台数の伸びが著しい。