化学療法後に穿孔をきたした回腸原発悪性リンパ腫の1例

摘要

消化管原発悪性リンパ腫の進行に伴う消化管穿孔は比較的多い合併症の1つであるが，一方で化学療法施行に起因する消化管穿孔例の報告も散見される．今回，化学療法後に穿孔をきたした回腸原発悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する．患者：72歳，男性.主訴：下血.家族歴·既往歴：特記すべきことなし．現病歴：1997年2月20日頃から下血があり，近医で右下腹部の腫瘤が指摘され，骨盤CTで回腸末端付近に腫瘤陰影が認められたため，精査目的で3月27日に当科へ紹介され，入院となった．入院時現症：身長165cm，体重65kg．眼球結膜に貧血を認めた．腫大した体表リンパ節は触知しなかったが，右下腹部に7×12cm大の腫瘤を触知した．腫瘤は不整形，弾性硬で腹壁への固定や圧痛は認めなかった．