統計に見る秋田県の茶生産について

摘要

明治期の秋田県や東北地方と静岡茶との交流については、すでに紹介した。ここでは、幾つかの統計から、秋田県の茶の生産と消費について紹介してみたい。雪国の代名詞ともいえる秋田県で、唯一茶の栽培と生産が近年まで行われてきたのは、北限の茶として知られる能代市桧山である。けれども、その生産も平成十五年には、茶樹を残し一旦その歴史に幕を下ろした。桧山茶は、「広報のしろ」(No.八一ニニ、能代市、一九九四、七.一〇)によると、享保十五(一七三〇)年頃に植栽されたのが始まりとされる。天保十(一八三九)年頃には、京都から新種の茶の実が導入され、宇治の製茶手法を導入して貧しい武家の内職とされる。宇治から製茶師を招き、桧山の二〇〇戸の人々が屋敷や裏山の畑に植栽し、栽培面積は一〇町歩余.(約九、九)あつたという。明治維新以降は、失職した武士の唯一の生業として製茶業が行われる。