多様な展開をみせる里山論: 2010年代のための里山シンポジウム一

摘要

シンポジウムの趣旨つい10年ほど前までは，行政や研究の場で里山を話題にしても，つかさどころがない，何が問題なのかわからない，そもそも我々の仕事の対象となるようなことなのか，といった言葉を返され ることが多かった。現在では里山に対する理解や問題意識は，ずいぶん共有されるようになったものの，里山 に関して十分な理解が広まり，それに根ざした議論が立ち上がっているとは，まだ言いがたい。里山は様々な 要素が絡み合った存在であり，生態系、環境、文化、社会、経済、生業などの多様な側面を持つ。しかし，今 までの林学周辺の関心と議論は，生物多様性や景観生態など，比較的限られた分野に集中してきたように思う。 多様な側面を持つ里山には，もっといくつもの登り口があるはずだ。林学が知らない山の向こう側で，我々と 違った里山の姿を見てきた人もいるだろう。今の時点での里山研究のショウケースとなるような場を設け，そのような人々と情報を交換し議論を深めたい。それが，今回のシンポジウム「2010年代のための里山シンポ ジゥ厶-どこまで理鲑できたか.どう向き合っていくか-Iを企画した狙いであった。