宣教師型から参加型への変身（変心）

摘要

参加型手法は，生産者やスタッフの主体性を引き出すのに有効な方法です。具体的な事例は，この連載の第6，8，10回でご紹介してきました。またこれからも連載内でご紹介していく予定です。今回は，これらの手法を用いて酪農の現場にアプローチした酪農コンサルタントの思いをご紹介いたします。過去を振り返りながら，なぜ宣教師型1）から参加型に変身（変心）しようとしたかを振り返ってみます。筆者は勤務臨床獣医師として臨床生活15年を経験し，平成7年の春に「酪農コンサルタント」として独立開業（開業獣医師）をしました。乳質改善の専門家として，全国の酪農家のもとを訪れており，診療活動は行っていません。しかし，いつの頃からか何か仕事がうまくいかない状況になってしまいました。今から思い出せば開業後10年くらいを経てからでしょうか？その頃から酪農家の規模拡大のスピードもあがり，法人として企業化する酪農家が増えてきていました。私が開業当初は搾乳牛100頭くらいを飼っていれば大きな酪農家でした。ところが，今になっては300頭以上を飼っていないと大きな酪農家とは言えないよう別犬況です。100頭くらいまでは家族経営で行える規模であり，従業員もいませんでした。したがって，酪農家のお父さん（オーナー）に，牛のこと，機械のこと，施設のことなどの酪農場の問題点の話をすれば家族全員に伝わり，多少遅くとも問題点は解決できたように思われます。アドバイスの内容も酪農家が経験したり，直接牛を扱っていたりするので，細かく説明しなくとも伝わる内容でした。ともに酪農での仕事が長いので，基礎的知識に共通認識（経験、学習）があり，詳しい説明をしなくとも私の説明の背景が伝わりました。