暖地田畑混合地域における土地利用の変化と利用調整のあり方

摘要

暖地の田畑混合地域において実施された大区画水田整備は，地域の土地利用にどのような変化をもたらし，また，その背景にはどのような経営の意向が働いているのかを，圃場実地調査，農家調査および多属性評価手法を用いて明らかにした。酪農，施設園芸，工芸作，露地野菜作等，地域の中核的な営農類型の経営は，大区画水田整備に伴って整備水田での基幹作物の作付けを拡大させたが，それに伴って畑地の利用にも大きな変化が生じた。とりわけ酪農経営においては，同時期に導入されたロールベール、ラップ体系との相乗効果により，水田でのイタリアンライグラスの拡大と，畑でのトウモロコシ1期作およびロールベール体系に適合的な作物の作付増加が認められた。 これら営農類型ごとの土地利用の変化の背景にある経営の意向を，圃場属性選好度としてとらえると，効率的な飼料生産を求める酪農経営は区画規模を重視し，一方，施設園芸や工芸作（タバコ作），露地野菜作などの経営は湛水によるクリーニング効果を期待して水田を重視するといった違いが摘出され，コンジョイント分析法の適用妥当性が認められた。 また，こうして得られた分析結果は土地利用調整要件として活用できる。