ビフィズス菌Bifidobacterium longum BB536による 免疫調節作用とその作用機序

摘要

ヒトの腸の表面積は400 m~2でテニスコート2面分に 相当する広さであり，そこに生息する腸内細菌は400 種以上，数百兆個とされている。ヒト腸管の免疫担当細 胞数は2000億個，全末梢リンパ球の60-70%とされ， パイエル板などを介して腸内細菌と常に接触し，宿主の 免疫系は腸内細菌から強い影響を受けていると考えられ ている。また，細菌やウィルスなどの構成成分を認識す るToll様受容体（以下TLR)が発見され，微生物の構 成成分がT細胞の分化に影響することが明らかになつ たことで，腸内細菌が宿主の免疫系に影響を及ぼすこ とは広く受け入れられつつある。このことから，ビフィ ズス菌や乳酸菌といったプロバイオティクスによるァレ ルギ一予防効果や感染防御効果，抗腫瘍効果といった様 々な免疫調節作用が，臨床試験や動物試験などで多数検 証されている。プロバイオテイクスは「適正な量を摂取した時に，宿主に有益な生理作用をもたらす微生物」と定義され (FAO/WHO, 2002),ビフィズス菌は乳酸菌と並ん で，発酵乳などの形態でプロバイオテイクスとして利用 されている。ビフィズス菌Bifidobacterium longum BB536 (以下BB536)は乳児の糞便から分離した菌株で，酸素 や酸に対して耐性を持ち，高い安全性が証明され，世界 中の多くの国でヨーグルトやサプリメント，育児用粉ミ ルクに利用されているビフィズス菌である。これまでに 整腸作用や免疫調節作用など多くの生理調節機能を有す