在宅人工呼吸療法(HCMV)としてのBiPAP装置による呼吸管理

摘要

当院では呼吸不全症例に気管内挿管を必要としない非侵襲的呼吸補助が可能であるbi-level positive airway pressure (以下BiPAP)を酸素化障害や換気障害の呼吸不全に急性期から施行している。慢性呼吸器疾患の急性増悪などにはnasal-BiPAP (PSV+PEEP)を行い,低換気障害からの改善を認め効果を示した。しかし, BiPAP療法からの完全離脱が不可能な場合もある。このような症例にわれわれは在宅人工呼吸療法(HCMV:home care mechanical ventilation)としてBiPAP療法を導入してきた。急性期病棟においてBiPAP療法を34例に施行し,そのうち完全離脱ができなかった7例が在宅となった。 今回, HCMVとしてのBiPAP装置による呼吸管理から症例を提示して報告する。基礎疾患では結核後遺症3例,肺線維症2例,塵肺1例,進行性筋ジストロフィ1例,男女比:1,平均年齢66歳であった。 HCMVの開始基準としては, ①低酸素血症の改善, ②換気不全の改善, ③無気肺の予防, ④酸素消費量,心筋酸素消費量の軽減を目的とし,生理学的徴候や検査値を指標に適応の条件とした。BiPAPはレスピロニクス社のBiPAPS/Tと院内使用のBiPAP-Visionを用いた。 呼吸設定ではIPAP6-12cm H_2O, EPAP3～5cm H2_O (IPAP>=EPAP)の条件で在宅酸素療法(HOT)併用下に実施した。 在宅BiPAP療法の利点としては会話ができること,最も優れたコミュニケーションの手段を奪わなくてすむ。 装置を付けたりはずしたりが簡単で日常生活のQOLを維持することが可能である。