PROP味覚感受性と苦味のある食品の噂好との問係

摘要

天然に存在している苦味の多くには毒性があり，人が苦味を嫌うのは，毒性に対する自然に備わった防御反応と考えられている。我々は新生児の段階ですでに苦味を識別することができ，成長していくにつれ，多くの人はコーヒーやビール，ゴーヤなど苦味を持つ食品が食べられるようになる。一方，－N－C＝S構造をもつ苦味を呈する物質であるPTC（phenylthiocarbamide）やPROP（6－propyl－2－thiouracil）の苦味をほとんど感じない人たち（non－taster，taste blindness味盲）がおり，PROPの味覚感受性は人により大きなばらつきがあることが知られている。この性質はメンデルの遺伝法則の中の劣性遺伝をすると言われている。感受性は，外界の刺激や印象を感じとる力のことで，味覚では味物質の有無や開催，味の強さの感覚を指している。PROPの味覚感受性のような遺伝的に決定されている要因が食品の好き嫌いに及ぼす影響はわずかでも，幼児期から積み重なると，食品の好き嫌いに大きな影響を及ぼしていると推測される。