臨床栄養の立場から

摘要

日常の食事が病気の発症や治療に関与していることを，人間は古くから経験的に知り，その知恵は地域や部族の中で祈祷や医術として伝承されてきた。1783年，フランスの化学者ラボアジェが近代栄養学の扉を開き，疾病と食事との関係はエネルギーや栄養素を基本として科学的に解明されるようになった。 1877年，ドイツ人医師フォイト（Foit）は食事の成分を考慮して食べることの必要性を説き，近代栄養学の考えフナをわが国の医療関係者に紹介し，その後，病院食はわが国独自の発展をした（表1）。 1917年，米国において食事療法（Diet Therapy）を実践する専門家として栄養士（Dietitians）が誕生し，わが国においても1925年に佐伯栄養学校が開設され，翌年3月に最初の卒業生15名がいわゆる「栄養士」として世に出た。 1924年には，慶應義塾人学医学部に食養研究所が開所されて病人食の研究が始まり，その後，病院に栄養上が勤務するようになり，この頃から大病院に特別調理室が設置され，病院で提供される食事の一部が，食事療法として治瞭のなかに組み込まれていった。