分裂酵母を宿主としたβ-カロテン生産技術の開発

摘要

カロテノイドは40 個の炭素原子から成る有色テ ルペノイドの総称である。植物や微生物等自然界に多 く存在し、産業界では以前から食品や化粧品の顔料と して広く用いられてきた。β-カロテンを含むいくつか のカロテノイドはプロビタミンＡとして抗酸化作用、 免疫賦活作用、抗腫瘍作用など優れた生理活性を示し、 健康補助食品や化粧品添加剤としてその需要は増加し 続けている。なかでも最も需要があるとされて いるカロテノイドがβ-カロテンである。これまで 商業的に利用されてきたβ-カロテンの多くはニンジン からの単離や複雑な有機合成過程を経る化学合成によ るものであった。化学合成による生産法では収率が低 く生産コストがかかる上、石油資源の枯渇や二酸化炭 素の増加による環境問題·人口増加による食糧問題が 懸念されている社会背景から近年これに代替する生産 法の確立が求められている。そこで本研究では、木質 系バイオマスなどの再生可能資源を原料とし安定的か つ短時間での有用物質を生産するバイオプロセスに着 目し、微生物によるβ-カロテン生産技術の開発を目指 した。