走行車両シミュレーションのための転がり面接触摩擦モデル

摘要

走行車両のモデル化とシミュレーションの技術は，タイヤ·車両と操作系の効率的な設計開発や，シミュレータを用いた運転·操縦技能の訓練，あるいは，コンピュータゲームなどのために有用である．路面とタイヤの間の相互作用は走行車両の挙動を決定する重要な要因であるが，これはタイヤ自体の転がりと粘弾性挙動，そして接触面内に混在するすべり（動摩擦）と固着（静止摩擦）が絡み合った複雑な力学現象である．タイヤが地面から受ける力とモーメントを記述するためには，実験データのフィッティングから得られる経験式がよく用いられる．しかし，頻繁な停止，切り返し，据え切りなどを繰り返すような動作における力とモーメントを記述するためには，状態の履歴や過渡応答特性を考慮する必要があり，力学的な裏づけがない経験式だけでは非常に困難である．