水素製造プロセスを需要として含むマイクログリッドの運用手法 : モデル予測制御型運用手法の提案

摘要

持続可能な低炭素社会の実現に向けて，再生可能エネルギー(以下，RE)を利用した発電の導入が世界中で急激に進hでいる(1)。特に，太陽光発電(以下，PV)や風力発電(以下，WT)が広く普及しているが，これらの発電出力は天候に左右されるために安定した出力を得ることが難しいだけでなく，予測が難しい，制御性が低いといった「扱いにくさ」が，特に面的に狭い範囲で活用しようとすると顕在化する。このような扱いにくさを解消するために，蓄電池をはじめとするエネルギー貯蔵設備の利用が広く検討されている。Liらは(2)において，PVやWTのハイブリッド発電システムの出力変動を抑えるための手法として，SOCフィードバック制御をかけながらリアルタイムに複数の蓄電池間の充放電を配分する手法を提案している。Taniらは(3)において，WTやPV,ウルトラキャパシタ，蓄電池を備えた分散電源システムのエネルギーマネジメントシステムを提案しており，蓄電池の活用によりPVやWTの出力変動の影響を抑えられることを示している。また，水素もエネルギー貯蔵媒体として注目されている。Carrascoらは(4)において，高品質な二次エネルギーとして水素貯蔵のポテンシャルを報告している。水素は，貯蔵性，輸送性や使用用途の多様性に優れ，使いようによっては高効率である。さらに，(4)ではREにより生成されたC02フリ一の水素を化石燃料の補完·代替として利用する可能性も示されている。2018年の東京宣言(5)においても，水素が安心かつ発展的なエネルギー利用に貢献できることが示されると共に，各国が水素関連技術の開発や普及に向けて協力していくことの重要性が確認された。