私的空間の樹木群が形成する地域共有資源としての緑景観に関する研究その１:私的空間の緑の豊かさによる住民意識への影響

摘要

都市の緑は大きく公共空間の緑と私的空間の緑に分けられる。市街地の大半は私的空間で構成されており、都市の緑地計画を考える上で、これら私的空間の緑は保全・育成されるべき貴重な資源ということができる。私的空間の緑として宅地内の庭木や生垣に着目すると、庭木や生垣といった樹木群は、個人の財産ではあっても集積することによって、良好な環境と地域個性を形成する共有財産としての性格を持つと考えられる。しかし、私的空間における緑の保全・緑化は所有者の努力に委ねられており、現実には所有者の高齢化や経済的負担から、手入れが悪くなり、土地の売却や細分化によって緑の景観が変質している地区もある。以上の問題意識から、宅地内に豊かな緑が存在する戸建住宅地を取り上げ、住民が宅地内の庭木や生垣によって形成される緑の景観をどのように評価しているのか、個人の財産である庭木や生垣といった宅地の緑に公共的な価値を感じているのか、あるとすればどの程度の経済価値なのかを評価する。