体験交流施設としての廃校利活用に関する基礎的研究:地域ブランディング拠点としての可能性の考察

摘要

人口減少社会にある日本において,少子化による公立学校の廃校発生数は,平成4年度から23年度の20年間で6834校に上る。これらをいかに活用するかという視点において,既存ストックの有効活用,維持管理?マネジメントが重要視されている。地域コミュニティーが希薄化する近年,地域活性化や交流人口増大に向けて観光振興を図る取り組みが増えている。加えて,地域の魅力づくりを含め,地域ブランディングに取り組む例も多くみられる。地域ブランド確立のためには，地域資源を地域内の住民が認識?共有し,地域外へ発信，地域内外で地域イメージが共有される必要があるとされるが,崔?岡本(2012)は,地域ブランド構築のための中心的な課題は,内部活動統括主体の不在にあるとしている。つまり,地域ブランディングのために地域における多くの活動を統括する主体が求められる。一方で,権(2011)は,学校の来歴から,特に山間部における公立の小中学校は物理的?精神的双方の面で地域の中心であったと述べている。さらに今日の廃校の利活用に関して,「公立学校施設に関わる財産処分手続きの簡素化?弾力化」 (2008)により廃校の教育施設以外への転用や民間の参入が容易化したこともあり,地域住民が参加することの重要性が指摘されるようになったとしている。