分子動力学シミュレーションによる炭素クラスターと転位の相互作用メカニズム（最大強度を示す炭素クラスター径と炭濃度の検討）

摘要

結晶材料中に母相とは異なる原子を固溶させると，固溶させた原子が転位のすべり運動を阻害するため材料の強度が上昇する．これを固溶強化といい，鉄の場合は炭素を固溶させる．さらにこの材料に熱処理を施すと炭素原子が固溶状態から析出状態に遷移するため，炭化物が析出する．この析出状態に移行する過程の材料硬度を時効硬化曲線で表すと，材料は時間とともに硬化し，あるところをピークに軟化した．このピークを示した鉄鋼材料からは炭化物が確認できず，近年の観測技術である3次元アトムプローブ（3DAP）を用いると，炭素原子が密集した炭素クラスターが観測されたが，その炭素クラスターの強化の発現機構は未解明である．