新しい省力化軌道構造：軌道構造の革新的解決策

摘要

鉄レール，レール締結装置，まくらぎ，バラストにより構成されるバラスト軌道は敷設や修復が容易である一方，列車荷重により軌道変位が生じやすく，常時メンテナンスを必要とする。一方，コンクリートまたはアスファルト路盤を用いたスラブ軌道は軌道変位が生じにくく，メンテナンスコストが抑えられる反面，設置コスト，工期面での不利に加え，路盤に厳しい条件が課されることから，時に路盤改良を要するなどの欠点ももつ。そこで，バラスト軌道とスラブ軌道の長所を組み合わせ，短所を極力減らした両者のハイプリッド構造として新たな省力化軌道構造WaO(Wartungsarmen Oberbaus)の提案を行った。開発コンセプトは，①DBの高性能線路の要件を完全に満たすこと，②メンテナンスは最小限であること，③使用部品は既存の信頼性の高いものを用いること，④既存のバラストを極力再利用すること，⑤バラスト軌道とスラブ軌道の長所を兼ね備え，短所を極力解消するものであること，⑥巿販の建設機械で対応可能であること，などである。具体的な構造は，既存バラストを破碎して新材料と混合し，広い粒度分布をもつ砕石を締め固めた路盤上にプレストレスの幅広まくらぎを設置し，加振して安定化させた後，締結部下にグラウトを注入してレール面を整正し軌きょうを構成する。まくらぎ側面にはバラストを散布して軌道を安定化する。開発に協力したドレスデン工科大学における試験の結果，大量の降雨条件下においても極めて軌道沈下の少ない結果が得られ，今後，実際の路線における試験を行う予定である。バラスト軌道とスラブ軌道のいいとこどりをねらい，両者のハイブリッド構造として新たな省力化軌道構造が開発された。ドレスデン工科大学での大量の降雨条件における沈下試験では良好な結果が得られており，今後は最終的な評価のため，DBの実路線における運用試験が予定されている。