小胞体ス卜レスと2型糖尿病における膵 beta 細胞脱落

摘要

2型糖尿病発症の分子機構は未だ不明である。最近の硏 究によれば，糖尿病の発症時にはタ細胞の脱落が認め られ，それは耐糖能異常の段階からすでに始まってい る可能性が示歧されている。この beta 細胞脱落に，小胞 体ス卜レスが関与すると考えられている。2型糖尿病の発症要因である過食、肥満によるインスリン需要の増 加は， beta 細胞での異常プロインスリン分子の産生増加 をもたらす。通常は，細胞内の小胞体ストレス応答機 構が働いて恒常性が保たれるが，遺伝的に何らかのbeta 細胞脆弱性を抱えている個体においてタ細胞脱落が惹 起される。2型糖尿病の発症において，膵 beta 細胞の脱落が重 要な役割を果たすか否か，以前は議論が分かれて いたが，最近の研究によれば，糖尿病の発症時に はタ細胞の脱落が認められ，それは耐糖能異常の 段階からすでに始まっていると考えられている"。 beta細胞は，インスリンを生成、分泌するために特 化された細胞であり，インスリンのmRNAはbeta 細 胞に存在する全mRNAの約20%に達するほどであ る1、このように，beta細胞では，通常から多量の インスリンを生成するため，プロインスリンから ィンスリンへの成熟の場である小胞体に対する負 荷が大きく， 2型糖尿病発症で認められるタ細胞脱 落に果たす小胞体ストレスの役割が注目されてい る。