卜リコスポロンの抗真菌薬感受性と耐性機構

摘要

深在性トリコスポロン症は好中球減少患者に発症するが，近年ではキャンディン系薬の使用中に発症するブレイクスルー感染症の事例が報告されている.これは原因真菌であるTrichospomn asahiiがキャンディン系薬に一次耐性を有するためで ある.一方，アソール系薬に対して高度耐性を示す卜リコスポロン属が検出された症例が報告され，ァゾール系薬の使用は同 薬剤に対する二次耐性を誘導する懸念がある.本症は比較的まれな感染症であるため各種抗真菌薬に対するプレイクポイン トは設定されておらず，厳密にいえば感性か耐性かの判定はできない.しかしわれわれは，in vitroでT. asahiiとフルコナ ゾールを長期間接触することで同薬剤に対するMIC値が接触前の16倍以上に上昇することを確認し，耐性を獲得したと思わ れる過程を示した.卜リコスポロン属の薬剤耐性機序は十分に解明されていないが，カンジダ属ゃァスペルギルス属で認めら れるァゾ一ル系薬の標的分子の修飾や標的分子へのアクセスの低下などと同様の機序を想定している.卜リコスポロン症は 今後増加が懸念されており，大規模な薬剤感受性試験の検討に基づくプレイクポイン卜の設定や薬剤耐性機序の解が急務で あり，これまでの研究でわかったことと今後の課題を概説する. ^g>卜リコスポロン属，ァゾ一ル系薬，薬剤耐性，ブレイクポイント