高島鎮雄機械式のススメ vol.64 クラシックなメカニズムにこだわるグラスヒュッテ·オリジナルパノマティックルナ

摘要

今でこそ機械式時計の中心地はスイスだが、かつての欧州ではフランス、イギリス、ドイツにも優れた時計産業が存在した。なかでもドイツはその国民性に根ざした精製な時計で、世界的に高い信頼を勝ち得ていたのである。自動車産業もカメラ産業も全土に散らばっていたが、時計産業だけは東端のザクセン州の州都ドレスデンから30km ほどの小さく静かな町、グラスヒュッテに集中していた。その歴史を繙こう。かつて銀の産出で栄えたグラスヒュッテは、1800年代になると資源が枯渇、衰退し始めた。これを憂いたザクセン王室が町の救済策を公募する。選ばれたのは、宮廷時計師だったアドルフ·テンゲの「時計製造業による活性化」という案であった。