パラメトリックCADを用いた視覚障害者DIY支援技術：紙幣識別板自動生成システムを題材として

摘要

視覚障害者が独力で3Dデータを造形することには、自身で支援技術1というメリットが存在する。障害者が必要とする支援技術（assistive technology）は、障害者が少数であることに加えて、個々の障害状況に応じてニーズが細分化している。そのため、障害者個々人のニーズにマッチした機器や道具を製作しようとする場合、テーラーメイドプロダクトの色彩が濃くなる。3Dプリンティングでは、従来の大量生産に比べて、部品一つを製作するのに必要なコストは高く、長時間を必要とするが、金型製作の初期コストなく任意の形状の部品が製作できる。製作数が限定され、金型を用いるような大量生産を考慮する必要のない福祉機器や補助具の製作では、3Dプリンティングのこうした特質は効果的に機能する。結果としてコストの低減も期待できる。補助具などとも呼ばれる支援技術は、利用者が日常的に装用するものである。自分の身体的特性を熟知した本人、あるいは本人と緊密な関係にある人物が設計·製作できることが望ましい。こうした問題意識はDIY支援技術（DIY assistive technology，do it yourself assistive technology）という開発スタイルを生hでいる。この点で、（視覚）障害者が、3Dプリンティングを用いて自身の必要とする機材を設計·製作できることは有効である。