昆虫の化学感覚器に発現するィ才ノトロピック型化学感覚受容体

摘要

外界の化学物質は，五感のうち，嗅覚と味覚によって受容，識別される。この2つは合わせて化学感覚と呼ばれ， 動物が最初に獲得した外界を認識する感覚系である。化学 感覚が認識する化学物質は数十万ともいわれ，その多様性 に対応するため，化学感覚受容体は遺伝子中で最も大きな ファミリ一を構成している。線虫から高等脊椎動物に至る まで，化学感覚受容体のほとhどはGタンパク質共役型受 容体ファミリ一に属しており，受容した化学物質の情報は Gタンパク質シグナル伝達経路を経て，その下流のィォン チヤネルが活性化されることで電気信号へと変換される。 しかし昆虫の嗅覚受容体や味覚受容体はGタンパク質共役 型受容体と共通の7回膜貫通構造を持ちながら，匂いや味 物質で直接活性化されるイオンチャネルを構成することが 明らかとなつた。また神経伝達物質のィオノ卜口ピック型 受容体が，昆虫では化学感覚受容体へと進化していること も明らかになった。一方で，昆虫の化学感覚におけるGタ ンパク質シグナル伝達経路に関する知見は，断片的である。 本稿ではこの昆虫にユニークな，化学感覚受容体として機 能しているリガンド活性型イオンチャネルについて述べる。、