ビアリール骨格の新しい構築法-[3,3]-シグマトロピー転位を鍵とするビアリ一ル骨格の合成

摘要

ビアリ一ル骨格は医?農薬品,電子材料,光学材料などで頻繁に見られる骨格であり,その構築法の開発は有機合成化学における最重要研究課題の一つである.2010年のノ一ベル化学賞の対象となつた遷移金属触媒によるクロスカップリング反応は,ビアリール骨格の有用な形成手法としてこの分野の進展に大きく寄与してきた.クロスカップリング反応では有機ハロゲン化物や有機金属化合物を別途調製する必要があるが,それに代わる直截的な手法としてC-H/C-H力ップリング反応が近年注目を集めている.2007年のFagnouらの先駆的な報告以降,遷移金属触媒によるC-H/C-Hカップリング反応は注目を集めている.しかし,致命的な問題となるのが触媒由来の残留金属である.遷移金属触媒を用いない手法として,超原子価ヨウ素試薬や電解酸化によるラジカル中間体を経由する手法が開発されているが,最近これらとは異なるアプローチとして,[3,3]-シグマトロピー転位を鍵とする手法が開発されてきている.本稿では,とくに反応系中でのヘテロ-ヘテロ結合の構築,続く [3,3]-シグマトロピー転位を経たビアリール骨格の構築法を紹介する.