膵癌組織に発現する腫瘍関連抗原の臨床応用： 免疫療法への応用をめざして

摘要

膵癌は現在も予後不良な癌腫の一つであり,新たな治療法の確立が急務である。抗腫瘍免疫療法は手術,化学療法,放射線療法に次ぐ第4の治療法として,その開発に多大な努力が 費やされてきた。われわれはcDNAマイクロアレイを用いて,正常細胞と癌細胞の遺伝子発現 を網羅的に解析することにより,膵癌組織にのみ高頻度に発現し,成人の正常組織にはほとh ど発現しない新規腫瘍関連抗原(tumor-associated antigen ： TAA)を同定した。さらに,ヒ 卜組織適合性白血球抗原(human histocompatibility leukocyte antigen ： HLA)に結合する ペプチドを推定するアルゴリズムとHLA卜ランスジエニックマウスを用いて,TAA由来で細 胞傷害性T細胞(CTL)を誘導するェピ卜一プぺプチドを同定した。こうして同定されたTAA は組織特異性に優れており,TAAを標的とした抗腫瘍免疫療法は癌細胞と正常細胞を識別し て,癌細胞のみを傷害する免疫応答を誘導することができる。このようなTAAを標的とした ぺプチドワクチン療法の臨床試験が進行中であり,将来膵癌の治療における一翼を担う可能性 が期待される。