ヒューマノイドロボット

摘要

我が国の産業用ロボットの市場規模は1980年頃から20年間，1年あたり5,000億円から6,000億円の範囲で推移し，横ばい状態にある。 市場が伸びなかった最大の理由は，ロボットにできる仕事の種類が大きく増えなかったこと，さらに元を辿れば，できる仕事の種類を増やすための基礎研究の成果が実用化レベルまで高められなかったことにあると考えられる。 一方，本田技研は，1986年から秘密裏に人間型ロボットの開発を実施し，1996年にその成果であるP2を発表して世の中を驚かせた。 P2の衝撃は専門分野が近い人程大きく，特定の技術に大規模な投資をすれば，従来困難であるとされていた問題でも克服が可能であることを改めて思い知らせた。 この様な民間の先行投資の刺激を逆に受けて，経済産業省は1998年から5年間「人間協調·共存型ロポットシステム研究開発プロジェクト(Humanoid Robotics Project, HRP)」を実施し，人間型ロボット基盤技術を開発するとともに，その応用可能性の実証を行った。 基盤技術開発の成果は人間型ロボットHRP-2とソフトウェアプラットフォームOpenHRPである。 我々は，ヒューマノイドロボットの研究開発を促進するため，これらの成果を事業化し，学術研究機関向けに提供することとした。 人間型ロボットHRP-2は川田工業㈱が中心となって開発したもので，川田工業が事業化を行った。 OpenHRPは，産総研·束京大学が中心となって開発したが，これらは学術研究機関であるので事業化はできない。 そこで，OpenHRPの制御ソフトウェア部分を事業化して，ユーザサポートを行うことを主目的に，ゼネラルロボティックス㈱を2002年10月に設立した。 本稿では，まずOpenHRPの概要を解説し，その後ゼネラルロボティックス㈱設立の経緯について，制度·資金·人材を中心に紹介する。