欧米主要国における建築市場コストデータ把握事情

摘要

近年,我が国におけるコスト管理を実施していく上での発注者·設計者側の悩みとして挙げられている点は，プロジェクトの算出予算と実勢価格との乖離であろう。 この要因として下記の実勢コストデータの把握の難しさが挙げられている。1．発注者，設計者にとって計画している施設が一体いくらくらいかかるのかの見通しを立てるペースとなる実勢市場でのコストデー夕が現行システムでは十分に整備されていない。2．契約取引価格はややもすると，実勢市場の価格よりも発·受注者間の商取引の関係,あるいは発注者側の指し値，等他の要田で決定されているケースが少なくない。 従って，その価格の基本となる工事項目コストに関しての市場性に乏しい。3．契約価格方式が総価契約方式一辺倒であり，その工事内訳書の中身の工事単価は，契約の対象となっておらず，市場コストの変動状況の動きを把握するのが容易でない。つまり,我が国においては実勢の市場コストデータの把撮の難しさが適切なコスト管理を実施していく上での大きな障害の一つになっている。 では，今号は欧米主要国の発注者·コンサルタントにとって，この市場コストデー夕の把握は如何に行われ,またプロジェクトの各段階でのコスト管理業務に如何に活用されているのかについて公共建築の流れを主にお伝えしよう。